平行世界

眠るという行為は平行世界の自分たちと記憶の同期・整理を行う行為であり、夢はその際に他の自分の行動や思い出を観ているだけである。

2013/09/29~2013/19/30

あるとき突然、携帯にメールが届いた。内容は、「この世界から一旦離脱して、別の世界で人生をやり直さないか」というもの。僕はその誘いに乗って、メールに書いてある場所に行った。そこにいってくじのようなものを引き、書いてある場所に飛ばされる。僕は次の世界ではなぜか女性になり、コンビニでバイトをすることになった。のだが、元の世界の記憶と今回の世界の記録が激しく混ざったせい...というのは後から気がついたことだが、とにかくこの世界の住人とうまく同期を取れないでいた。たとえば、この世界を去る少し前に去る気を僕に起こさせた出来事として、バイト仲間での飲み会があったのだが、指定された時間にその場所に行っても誰もいないのである。しかし、実際はその場所に僕以外の人間が集まっていて、僕はその空間に存在するし、僕以外の人間もその空間に存在する。でもお互いがお互いを認知できないのだ。そしてその状態にいる、ということに気がついたとき、僕はその世界にいることが無理だと分かった。そこでまたメールが来た。

「次の世界に行きますか」

そのメールに書いてある場所に行くと、今度は知っている顔(なんともともと最初にいた世界)がたくさんいてとても驚いた。向こうも僕を覚えている様子だったから、とてもうれしかった(僕はいつの間にか男に戻っていた。)。でも、別の世界に飛んだ理由は誰も訊かなかった。きっと訊いてはいけないことだったんだろう。その場所は机がいっぱい並んでいて、またくじを引いていくものだった。九時には今度は番号が二つ書いてある。一つ目の番号が行く世界の番号らしい。僕は「0」を引いた。つまり最初にいた世界のことである。最初喜んだ。しかし次の番号を視て一気に萎えた。次も「0」と書いてあったのだ。この0は「その世界の人間を何かしら順位付けした場合の数」らしい。普通に生きようと思ったら何億番が振ってあるはずだ。0~9は特殊で、世界の黒幕...を動かす黒幕...とか言うものになるらしい。0番目の世界を引いた者には引きなおす権利がある、との伝達もあった。僕は迷っていた。

ところで、その知った顔の中にはなんと0世界で僕が好きだった子もいた。その子は2を引いていた。あまり悲しくはなさそうだった。0世界の知り合いで飲み会ッぽいのがその場で行われて、そのままみんな次ぎの世界へ旅立っていった。最後に僕とその子が残った。一旦もとの会場に戻り、(なぜか用意されていた)自分たちの席に着くとちょうど隣の席になった。僕は我慢できずにその子を後ろから抱きしめ、実は0番世界を引いていること(飲み会の場では話題になったがあえて2番目と言っていた)、0番世界に戻れることはうれしいのだが、番号が嫌過ぎて迷っていること、そして実は君のことが好きだったということを伝えた。すると、実は向こうも僕のことを好きだったということを言った。そこからの展開を正しく覚えていないのが残念なのだが、結局僕は0番世界へ、その子は2番世界へ行くことになってしまった。実は最後にアレなことをしたようなしてないような...覚えていない。気がついたら僕は一人でその会場にいた。

次の世界へ行く方法は、今回は机でただ眠りにつくだけでいいらしい。授業中に良くやるように腕を枕にして僕は突っ伏した。なにか、ストン、という感覚があって僕は次の世界へ移動したことを自覚できた。

そういえば書いてなかったけど、移動の際に年齢ある程度巻き戻される。1番世界では僕は19歳くらいになってたし、今回は20歳になっていた。

0番世界へ到着したはいいが、自分が今この世界で何をしているのか把握することが今回の最初の課題らしかった。1番世界では、コンビニでバイトをしている女性、というのがなぜか最初から分かっていたからそのようにうまく振舞えたけど、今回は完全に分からない。元の世界で0番を引いて20歳だから大学生かな、と思った矢先にポケットから学生証が出てきた。東京の大学生だった。その瞬間になぜか自分がラグビー部だということが一瞬で頭に入ってきた。時刻は6:23。朝練に行く前にコンビニに立ち寄ったのだ(コンビニで寝てたことになっていた)。外に出ると駅前&&大学前のようだった。ラグビー部の部室がその近くにあることは分かっていたのだが、僕はそこで意識を失って倒れた。

ここでかなりの期間の記憶が飛ぶ。次に僕が覚えているのは、その世界で3年ほど過ごし、すっかりその生活に慣れていた頃のとある日である。

僕はラグビー部の部室の整理をしていた。なんかその部室は異常に広く、布団が何セットも並んでいた。部員たちはみんな朝練に行って、僕と女子マネージャー3人が布団の片づけをしていた。どうも僕は体が弱く、ラグビーをやるほどではなかったらしい。

自分の荷物を片付けていたら女子マネージャーに声をかけられた。僕の荷物はいつも異常なほどに物が少ないと。これは実は今回の世界で言われなれてきたことだから、いつもどおり答えた。僕はなぜかこの世界に突然現れ、倒れていたところをここの女子マネージャーに助けてもらったらしい。その縁でラグビー部に入ったことになっていた。...少々おかしい気がするけど...。

拾われた当時の自分は全世界およびくじ引き会場の記憶が鮮明だったらしい。というのも、今(このラグビー部で布団を片付けている自分)はほとんどその記憶がないからだ。自分がこの世界に、0番目とは言えどもともといたわけではなく、別の世界から来た、ということだけうっすらと覚えていた。しかし昔の自分もなかなか賢く、記憶が鮮明な間に、その記憶をノートにとても詳細に書き留めていた。ただそのノートの内容はどっかに発表するわけではなく、一人で静かに持っていただけだった。

布団も片付いたので外に出て、駅前の酒広場に向かった。なんか知らんけど、この駅前は酒広場になっていて、思い思いの人たちが酒を持って集まり、OPEN酒場になっていた。僕はその酒場店主の一人とかなり仲良くなっていて、毎日いっぱい飲んでいた。たしか赤ワインみたいなものだった気がする。当初は毎回買っていたのだが、いつ頃からかタダでペットボトルにいっぱいくれるようになっていた。ちなみに今思えば、店主のおっちゃんはエルラのおっちゃんに似ていた。

いつものようにお酒をもらって、飲みながら歩いていると部員が集まって輪になってたからそこに入った。と、そこにとある女子マネージャがいた。この子がこの世界で僕を発見して助けてくれた、いわば命の恩人である。そして僕は(節操もなく、)いつの間にかその子のことを好きになっていた。で、なぜか告白するなら今だ、とか思って皆の前で告白した。すると、その子はとても申し訳なさそうに、気持ちは嬉しいのだけどどうしても付き合えないという旨を言った。その瞬間僕は別のことに気がつきショックを受けていた。

くじ引き会場で誰かに言われたのだ。「別の世界で人を(異性として)好きになった場合、もうその世界にはいられない」ということを。

そしていつものメールが来たところで目が覚めた。

 

最後、その子が付き合えないということを歌にして歌ってくれたのだが、
その歌詞で僕は上のことを思い出した。

その歌がとても美しく、目が覚めて数分は覚えていたのだが、これを書いてる間(意外と長くなった)に忘れてしまった。とても美しくどこか悲しい感じだったから、思い出して作りたいのだが...

目が覚める前に思い出したのか、目が覚めてから頭が勝手にこじつけているのかちょっとわからないけど、「人を好きになった場合云々」はもしかしたら僕が一番最初に好きだった子(相手も実は僕が好きだった子)がかけた呪いかもしれなかった。